膨大なデータ処理に対応するため、大容量ストレージが求められており、高密度ストレージの必要性が高まってきています。NANDフラッシュにはSLC (Single-Level Cell)、MLC (Multi-Level Cell)、TLC (Triple-Level Cell)の異なる種類のものがあります。
下図は各種NANDフラッシュの特性を示しており、各円柱はストレージセルを表しています。1つのセルにSLCは1ビットのデータを格納するのに対し、TLCは3ビットのデータを格納します。
セルに焦点を当てることで、各NANDフラッシュの違いを理解することができます。SLCの1つのセルに記録できるデータ量は最も少ないですが、スピードは最速です。これに対し、TLCは正反対の性質をもっています。つまり、同じ量のデータを保存する場合、SLCはTLCの3倍のセルが必要となるため、コストが高くなってしまいます。
コストと同様に、容量やパフォーマンスも重視されるため、「SLCキャッシュ*」によりバランスのとれたソリューションを提供します。
*この技術はTLC NANDフラッシュのみに利用しています。
SLCキャッシュ
TLCのセルを束ねてSLCのように動作させることで、転送速度を一時的に高速化します。バッファー領域が全て使用された状態になると、元々のTLCの転送速度に戻ります。
SLC モード
SLCキャッシュはバッファー容量の制限により、高速での読出し/書込みを常に行うことができなかったため、TLCをSLCとして利用する別の技術として、SLCモードが生み出されました。全てのセルを束ね、各セル束が1ビットのデータを処理するように動作させることで、制限がなくなり、高速読出し/書込みを維持できるようにしています。
SLCモードではセル毎のストレージ容量が少なくなり、通常の3倍の量のセルを消費してSLCのように動作させる必要がありますが、それでもコストはSLCを使用した場合と比較して数十分の一に抑えることができます。つまり、SLCモードは大容量、高速パフォーマンス、低コストを兼ね備えたソリューションと言えます。
結論
耐久性やデータリテンションにおいて、TLCはSLCやMLCよりも劣っていますが、SLCモードの技術を用いることで、その課題を克服し、SLCに匹敵する信頼性を実現しています。SLCモードは、産業用アプリケーション向けの新たなソリューションです。